平成に時代が変わってから、各鉄道会社に徐々に採用され、当たり前のように見かけるようになった、VVVFインバーター制御。
相模鉄道では、旅客営業用電車は、他社からの車両を含め、全てVVVFインバーター制御車に統一されています。
そんな相鉄線のVVVFインバーターは、どのように採用が進んでいったのでしょうか?
まさかの旧型国電の生き残りから始まった相鉄のVVVF車
相鉄のVVVFインバーターの歴史は、東急9000系がデビューした1986年から1987年にかけて始まりました。
当時、新機軸のVVVFインバーターを導入したのは、3000系電車です。
旧型国電63系の車体更新車3010系を改造したもので、旧式の吊り掛け駆動から高性能化を行う際、最新鋭のVVVFインバーターに換装した、非常に数少ない例となっています。
対照的にも駆動方式は保守的で、歴代の高性能車に用いてきた、相鉄伝統の直角カルダン駆動となっており、当時の新機軸ながらも、相鉄らしさ溢れる車両となります。
また、各車両によって台車が異なっていたのも特徴だったそうです。
3000系の試験の結果を基に、1988年に新製車両として、新7000系の50番台がデビューし、平成元年まで40両が投入。
同じく試験結果を基に、1988年から1989年に、5000系の車体更新車である5100系をVVVF改造し、5000系が運行を開始します。
時代が平成に移り変わり、1990年より日立製作所製の8000系が、1993年より東急車輛製の9000系がデビューし、多くの6000系車両等を置き換えました。
8000系と9000系は、相鉄伝統の電磁直通弁式電磁直通ブレーキ(日立式電磁直通ブレーキ)を廃し、電気指令式ブレーキを採用しています。
相鉄独特の走行音
前述の通り、改造車両を含め、5形式のVVVFインバーター車両が登場した相鉄。
チョッパ制御や界磁チョッパ制御などは採用せず、抵抗制御のみを扱ってきた会社が、いきなり新機軸のVVVFインバーターを扱うようになって、攻めた印象を持ちますが、
先ほども3000系の所で触れた通り、先ほど5形式、全て他の普通鉄道では用いられなくなった、相鉄伝統の直角カルダン駆動を採用しています。
そのため発車時に、VVVFインバーター独特な音で加速しだしたと思ったら、他社VVVF車両にはない、まるで吊り掛け駆動のような低音が響くような、特徴的な音を出します。
また、駆動装置が載せられる電動台車に関しては、軸距が2450mmと旧型客車並みに広く取られ、付随台車が2100mmの軸距となっている事も相まって、ジョイント音のリズムも独特です。
伝統を無くした車両の投入と、抵抗制御の淘汰
VVVFインバータ車両でも、これまで通り、直角カルダン駆動と外付けディスクブレーキの台車を採用してきた相鉄ですが、
2002年より導入した10000系では、JR東日本E231系をベースにしたこともあり、相鉄伝統の直角カルダン駆動を廃し、TD平行カルダン駆動になりました。
それ以降、11000系、20000系、12000系が順次導入され、走行機器に関しては、オリジナリティが無くなっています。
20000系は相鉄では初めて、スイッチング部は従来通りの素材、Si(シリコン)-IGBTを使用しているものの、
電力の逆流を防ぐダイオード部の素材にSiC(炭化ケイ素)を用いた、いわゆるハイブリッドSiCと呼ばれている、VVVFインバーター装置を採用しています。
主電動機も、これまでは極数が4つの物(4極)だったものから、6つの物(6極)になっており、
結果インバーターが扱う周波数が、1.5倍となるため、相鉄らしからぬ甲高い近未来的な駆動音となっています。
※極数とは、誘導モータの固定子につくられる磁極の数です。N極が2極、S極が2極で4極に、N極が3極、S極が3極だと6極になります。
10000系、11000系、20000系、12000系の導入により、新6000系や7000系の淘汰も行われ、
JRとの直通運転開始の前日、2019年11月29日、7715×8の運用離脱を以て、全ての旅客営業電車のVVVFインバーター化が達成されました。
徐々に進行する機器更新
2013年より、9000系では、新型保安装置ATS-P導入に伴う誘導障害対策のため、インバーター装置を交換。
これまで、東洋製独特のけたたましい励磁音から、京王9000系のような励磁音に変化しています。
2016年より、8000系に於いても、インバーター装置の交換を開始。
日立製の過渡期特有のけたたましい独特な励磁音から、前述の9000系とほぼ同一の励磁音に変化しています。
この交換工事は、直通車両導入後も残存予定の計6編成に施工され、2019年を以て、対象車両の更新が完了。
未更新車両は、2021年12月の8706×10の離脱を以て、GTOサイリスタを用いたVVVFインバーターの車両は、相鉄線から消滅をしました。
8000系・9000系は、独特なインバーターこそ聞けなくなったものの、
励磁音の変化により、直角カルダン駆動方式の駆動音が目立つようになり、これまた他社では聞けない駆動音である事には変わりません。
2020年より、E231系ベースの10000系の機器更新が施工されます。
E231系ベースという事もあり、はるか遠くのJR東日本長野車両センターに甲種輸送にて輸送され、ベースとなったE231系同様の装置に交換。
励磁音も機器更新を行った0番台、500番台、3000番台と同様のものになりました。
JRからも数が大幅に減った、E231系独特の励磁音も、相鉄から聞けなくなる時が近づいてきました。
おわりに
相鉄に興味を訪れた際は、最後の直角カルダン駆動車、8000系・9000系の走行音もぜひお楽しみください。
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