2023年3月18日、相鉄線と東急東横線・目黒線は、直通運転を開始しました。
目黒線側では、3形式ある内の3000系と5080系が、相鉄線に乗り入れている一方、
残りの1形式、3020系は相鉄線防護無線が取り付けられてない等の理由で、相鉄線への入線が不可能となっています。
実際、直通運転開始前の試運転、乗務員訓練等での入線実績は一切ありません。
なぜ、東急目黒線3020系は、3月開業時点での相鉄線への入線ができないのでしょうか?
今後、相鉄線への乗り入れ対応が行われるにしても、なぜ他の3000系・5080系より遅れて対応させるのでしょうか?
目黒線車両・東急3020系とは
東急3020系は、2019年11月22日より目黒線にて運転を開始した電車です。
田園都市線用新型車両2020系の目黒線規格仕様車となっており、8両編成が3本製造されています。
運行開始当初は、真ん中2両の付随車両を抜いた暫定6両編成で運行、2022年4月1日より本来の8両編成で運行を始めました。
東急3020系の導入目的は、目黒線輸送力増強、東急新横浜線開業による必要車両数増加、既存車両の8両化ならびに乗り入れ対応工事実施に伴う予備編成の確保です。
この目黒線3020系ですが前述の通り、3000系や5080系と異なり、相鉄線への入線試験が行われておらず、
Twitterなどの目撃情報によると、運転台の複数個所に「相鉄入線禁止」と書かれた黄色いテプラが貼られている事が確認されています。
3月16日、3123Fが長津田検車区に相鉄防護無線設置のため入場しており、今後確実に乗入対応を行うものと考えられます。
なぜ対応工事が間に合わず、入線禁止になったのか?
既存車両対応化による予備車確保の都合と施工時期・工期
相鉄・東急直通線開業以前の目黒線は、編成数26本に対し、運用は21本、つまり予備車は5本となっています。
一見すると予備車に余裕があるように見えますが、目黒線電車の乗務員訓練が本格的に始まったころ
同時期に長津田検車区にて、3000系の8両編成への増結と相鉄防護無線設置が急ピッチで行われた事
2022年10月時点で、すでに全10編成が8両編成となっていた、5080系の相鉄防護無線の設置も同時に急ピッチで行われており、運用予備に使える編成が少なくなっていました。
日によっては、長津田検車区に対応化を待っている目黒車が4編成も居た日があり、ダイヤ改正直前の最も忙しい時期に、運用がかなりカツカツな状態となっていました。
また、直通運転開始直前になってから、3000系・5080系・5050系4000番台を、
急ピッチで相鉄線乗入対応化を進めていたことから、目黒線全26編成への施工が間に合わなかったというのも、十分考えられます。
なお、実際の相鉄線での試運転は、運用数が少ない土日を中心に行っていたことや、午前中に終了する運用に就いていた編成を充当させていました。
3000系・5080系や東横線5050系とは異なる搭載機器
3月18日開業時点で相鉄線に乗り入れている東急車は、目黒線側が3000系・5080系、東横線側が5050系4000番台の計3車種。
3000系と5080系は、外観や内装、車体の作りは大きく異なるものの、床下機器に関しては、ほぼ同一のものを採用。
5050系に関しても、5080系と同じ5000系列という事で、ほぼ同一となっています。
要するに、3000系・5080系・5050系は、同じ車両スペックであると言えます。
運転台周りに関しては、様々な部分で違いはありますが、全くの別物と言う訳では無いと言えるでしょう。
一方、3020系含む2020系列は、JR東日本E235系をベースとした車両。
次世代車両制御システム「INTEROS」が採用されている事や、
SiC適用MOSFET素子を用いた、三菱製の新型VVVFインバーターの搭載や、5000系列とは大きく異なる主電動機の採用など、搭載機器が上記3車種とは大きく異なっています。
そのため、車両性能、加減速の挙動が大きく異なる事などから、上記3車種とは別メニューで乗務員訓練を行わなければなりません。
先ほどの搭載機器の違いにより、誘導障害試験も、別途実施しなければいけないことも確実です。
3編成のみと編成数が少ない事
東急目黒線車両、全26編成の内訳ですが、形式単位で見ると
- 3000系・・・13編成
- 5080系・・・10編成
- 3020系・・・3編成
の合計26編成となっています。
東急2020系列そのものは、東急内で多数派の系列となっていますが、
目黒線内で見ると、3編成のみのいわゆる「レア車」となっている事が分かるでしょう。
先ほども述べた通り、多数派の3000系・5080系、計23編成の相鉄線乗り入れ対応化を最優先させたい事、2形式とは機器が大きく異なることも重なった事から、
わずか3編成しか在籍せず、乗務員訓練の手間が掛かる3020系のみを、相鉄線乗り入れ不可としても、運用上大きな支障をきたさないと判断されて、
3月18日開業時点での乗り入れはせず、相鉄乗入対応と乗務員訓練が後回しにされたのでしょう。
まとめ
- 相鉄線乗入対応化により、運用予備が大幅に減り、3020系の対応工事が遅れる
- 工期の確保が難しく、多数派の3000系・5080系の対応が最優先とされた
- 3000系・5080系と機器が大きく異なるため、別途試験、乗務員訓練が必要
また多数派となる2形式の乗務員訓練を最優先させた事 - わずか3編成のみの所属で、対応させなくても運用上大きな支障をきたさない
要するに「1.全編成の工事が間に合わない 2.他とは機器が大きく違う 3.編成数が少ない」と言えます。
以上の要素を踏まえると、多数派の2形式の乗入工事や試験・訓練を優先させて、結果的に乗入対応が開業後に後回しにされたという事ができるでしょう。
3020系の導入目的は、十分果たされている
せっかく最新形式を導入したのに、相鉄に乗り入れられてなくて、もったいないという意見を多数見かけますし、その意見に関しても十分理解しています。が…
3020系は、十分導入された役目を果たしていると言えるでしょう。
3020系導入の主目的の一つに「相鉄線関連工事による予備車の確保」が挙げられます。
導入直後の2020年より、3000系・5080系の相鉄線保安装置搭載工事が開始され、恩田工場やJ-TREC横浜に入場し、複数の編成が運用を離脱していました。
2022年に入り、既存車両の8両編成化や相鉄防護無線の設置も行われ、その際にも複数編成が同時に運用を離脱。
複数編成が同時に離脱している中、これまで通り、目黒線の車両運用のやり繰りが出来たのも、この3020系が3編成導入されたからです。
結果、上記で述べた様々な理由の通り、3020系の相鉄線乗入対応が後回しにされましたが、
導入目的の一つであった「予備車の確保」は十分果たされたと言えるでしょう。
おわりに
3020系はいつ頃、相鉄線乗り入れ運用での運行を開始できるのでしょうか?
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。
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